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甫さんの朝比奈玉露

日本三大玉露生産地である静岡県朝比奈にて、「朝比奈玉露」を生産している方へのインタビュー第五弾。

より多くの人に朝比奈玉露とその魅力を知っていただきたいです。ぜひ、最後までご覧ください!
なお今回ご紹介する皆さんは、全て手摘みで収穫した茶葉を自分の工場で揉むことで、最高級の玉露をつくる生産者さんです。


生産者紹介

第五弾となる今回は、尾村 甫(おむら はじめ)さんです。
現在94歳となる、朝比奈玉露生産者の中の最年長。
玉露づくりはもちろんのこと、甫さんは手揉みに関して広く知られています。手揉みの伝統技術の継承者である甫さんは、無形民俗文化財の保持者として認められています。無形民俗文化財は、日本において人々が日常生活の中で生み出し、継承してきた無形の文化財です。

玉露づくりを極め、みなさんからその技術を高く評価される尾村 甫さんを深ぼっていきます!

 きっかけ

お母様が先代のおじいさんと二人で管理していた茶園を譲り受けた甫さんは、終戦直後から本格的にお茶作りを始めました。
お母様は機械がなくお茶の加工はできなかったため、甫さんが機械を借りて手伝うようになったのが始まり。そこから現在にまで続く長いお茶作りの幕が開いたのでした。
 
本格的にお茶づくりに関わるようになると、静岡県茶手揉保存会に所属し、様々な要職に就任。審査の指導委員長を務めたり、金谷にある国立試験場の茶業科の生徒に指導したりしてきたそうです。また、奥久慈茶が作られている茨城県の大子町でも、小室栄寿さんから指導をお願いされるなど全国各地のお茶の産地を巡ったといいます。なお、小室栄寿さんは全国手もみ茶品評会で農林水産大臣賞を受賞した方です。

手揉みとは

みなさんは、手揉みのお茶についてどれくらいご存知でしょうか。
甫さんの凄さを理解するために、ここでは少し手揉みの概要をお伝えします。
市販のお茶のほとんどは機械で加工がされているため、手揉みのお茶を飲んだことがある方は少ないかと思います。
 
摘んでから蒸した茶葉を6時間以上乾燥させて、細長い茶葉の形にまで仕上げます。中腰で立ったまま揉み続けるも、できる量はごくわずか。手揉みのお茶はとても貴重で手が掛かっているのです。機械製茶が基本となった現在でも、手揉み製茶の技術を向上させて広めていけば、茶葉の状態を手の感覚で掴むことができます。
 
手揉みのお茶だからこそ生み出せる良さは、針のように細く伸びた美しい茶葉。他のお茶とは一線を画すツヤや輝きを感じます。

甫さんの理想のお茶

良いお茶とは、
「針のようにピンと伸びた茶葉」

手揉みだからこそできる、針のようにまっすぐとした形に仕上がる茶葉が理想であり、浅く刈って新芽を綺麗に摘めると揉みやすいと教えてくださいました。
 
また、甫さんは手揉みだけではなく、玉露づくりもなさっています。その玉露の特徴は、伝統的な本玉露であること。稲藁で編まれた菰(コモ)で被せをして玉露づくりをされています。

師匠としての甫さん

甫さんは兼ねてからお弟子さんが全国に何人もいらっしゃいます。そのうちの一人、私たちの活動に深く関わってくださっている宮崎 紀忠さんにいくつか質問をさせていただきました。

宮崎さん

 Q1. いつから甫さんにお茶づくりを教わっていますか?
5年前に手揉み保存会で知り合ったのがきっかけで、成り行きで師匠と弟子の関係に。3年前から玉露づくりも教わりはじめました。
 
Q2. 師匠に甫さんを選んだ理由は何ですか?
玉露づくりに関しては、地域おこし協力隊の方が後継者として甫さんと玉露づくりをしていたところで少しお手伝いしていました。そのご縁で「玉露を作らないか?」と声をかけられたことから、甫さんのもとで学ぶことになりました。
 
Q3. 甫さんの尊敬しているところはどこですか?
玉露の事、手揉みのことが本当に好きなところかな。甫さんの人生そのものが玉露づくりだと思っているので。
甫さんは手揉みの伝承に力を入れてきていて、お弟子さんは日本各地にいますし、技術は未だに凄いですからね。お茶屋さんのニーズに合わせた揉み方が出来ることが甫さんの凄さです。


最後に

常に優しい雰囲気を纏われている甫さん。そのご様子を見ていると、保持している肩書きやこれまでの経歴の数々は、本当に玉露や手揉みが好きで向き合ってきた結果なのだろうと感じました。手揉みの技術を伝承している人は少なく、習得するまでの道のりも長い世界。その中で高い技術を身につけて多くの人に広めてきただけでなく、今なお後継者育成を含めお茶の世界に携わっている姿に感銘を受けました。

まっすぐな想いと向き合い方に、お茶だけでなく生き方までも学びを得た気分です。ぜひ、今後なにかしらの形でも手揉みに携わってみたいと思えるお話を聞かせていただきました。貴重なお話をありがとうございました。

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